W/F ダブル・ファンタジー / 村山 由佳
2009年 02月 23日
奈津・三十五歳、脚本家。尊敬する男に誘われ、家を飛び出す。“外の世界”に出て初めてわかった男の嘘、夫の支配欲、そして抑圧されていた自らの性欲の強さ―。もう後戻りはしない。女としてまだ間に合う間に、この先どれだけ身も心も燃やし尽くせる相手に出会えるだろう。何回、脳みそまで蕩けるセックスができるだろう。そのためなら―そのためだけにでも、誰を裏切ろうが、傷つけようがかまわない。「そのかわり、結果はすべて自分で引き受けてみせる」。
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先々週末に「王様のブランチ」でも紹介されていましたが、
村山由佳さんが新作『ダブル・ファンタジー』を出されました。
今まで村山由香さんの全作品に目を通してきて、
「良くも悪くも、売れる作品を書く人だよなー」と思ってきました。
「おいしいコーヒーの入れ方」シリーズのかれんさんなんて、まさしく。
いかにも健全な男子が好きそうなか弱い女の人で、
(なので不健全な女子の私からするとちょっとイラッとする)
健全な男子なら誰もが直面する悩みを、いかにも売れそうな感じに盛り込んで。
…と、ここまでいかにも売れそうな小説を書くのってすごいよなーと
(でもやっぱりおもしろいから読むと止まらないんですけどね)
少し引くくらいだったのですが、今回はご本人も語っていらっしゃっているように、
今までの作品とはずいぶんと毛色が異なる作品です。
作中の言葉を借りると、「広げた大風呂敷をあえて畳まない」感じというか。
正直言うと、ストーリー的には話という話はあったりなかったりなのですが、
細かいところにいちいち共感できる作品でした。
溢れる性欲のお話では『海を抱く BAD KIDS』の続編っぽいし、
大人な性描写という点では『野生の風』っぽい。
でも今までは愛がなくてもきれいで気持ちいいセックスが多かったのに、
今回は汚なかったり気持ち良くなかったり萎えるセックスも
きっちり描いてあるのが大人向けだなと思います。
(エロ坊さんの「極楽浄土を見れました」には爆笑しました)
自由であること。
性的に縛られないこと。
仕事に制限を受けないこと。
当たり前であってほしいのに、当たり前じゃないし、
作るのも持続するのも難しいことなんだよねって思い知らされます。
以前村山さんの作品を読まれた方はご一読頂けると、
また違った魅力を発見できるのではないかと思います。
そんなこんなで久々の小説レビューでした!