魂萌え ! / 桐野 夏生
2012年 05月 30日
ささやかな<日常>に、豊饒な世界を描き出した、再生と希望の物語。
夫婦ふたりで平穏な生活を送っていた関口敏子、59歳。63歳の夫・隆之が心臓麻痺で急死し、その人生は一変した。8年ぶりにあらわれ強引に同居を迫る長男・彰之。長女・美保を巻き込み持ちあがる相続問題。しかし、なによりも敏子の心を乱し、惑わせるのは、夫の遺した衝撃的な「秘密」だった。
何気なく図書館で手に取って、もっとエログロを想像していたのですが、
これはこれでいい意味でも悪い意味でも桐野さんの作品じゃないみたいでした。
作品を読んで、真っ先に母のことが浮かびました。
主人公の敏子にそっくりなんです。
結婚以来ずっと専業主婦で、優良企業に勤める旦那の陰で家を支える。
自分じゃどこも行くことができず、自分の家の周りでクローズしている。
そして子どもに好き放題される(笑)
自分の意見が言えずに流されるばかりだった敏子が、
旦那の死をきっかけに徐々に自分を持ち始める――立ち直る姿が良いなと思いました。
旦那を先に亡くしたあと、奥さんがシャキーンとしているってたまに聞く話ですが、
なるほどこういう風に元気になっていくのかと(笑)。
敏子のほかに、いわゆるアラ還の登場人物がほとんどなのですが、
年齢的にアルツハイマーを疑われるほどわがままになってきたり、
最後に一花とばかりに色恋に走ったり金の亡者のようになったりと
ある意味若い人たちより本能に従って生きてるなぁ、たくましいなぁと
妙な感想を抱いてしまったそんな小説。