彼女のこんだて帖 / 角田 光代
2011年 10月 13日
長く付き合った男と別れた。だから私は作る。私だけのために、肉汁たっぷりのラムステーキを!仕事で多忙の母親特製かぼちゃの宝蒸し、特効薬になった驚きのピザ、離婚回避のミートボールシチュウ―舌にも胃袋にも美味しい料理は、幸せを生み、人をつなぐ。レシピつき連作短編小説集。
普段、人一倍集中力に欠ける私が唯一集中力を発揮できるのが料理です。
すごく落ち込んだときも、ええいと台所に立てば無心に手を動かせる。
最近他のところでも書いたんだけど、一言で料理っていっても
献立を考えて買い物をするところから始まっていて、
最近たんぱく質が足りてないから鶏胸肉を買おうとか
どんな器にどんな盛り付けにしようかなとか
冷たいポタージュを作りたいからかぼちゃはいつ火にかけようとか
いろいろいろいろいろいろいろ考えることがあって。
今日あった嫌なこととかが挟まってくる暇がない。から好き。
なんてことない日常のレシピ、特別な日の特別なレシピ、
ケンカしたときの仲直りレシピ。
料理は五感すべてを刺激するので、妙に記憶に残る。
作中のそんなレシピたちも、恋人と別れちゃったり、奥さんが亡くなってしまったり、
過度のダイエットをした妹がいたり、いろんなエピソードと一緒に食卓に上がっていて、
どのエピソードも淡々としていて、でもキラリと光が刺すようなお話。
「今日食べたものが明日のあなたを決める」という言葉がとても好きなのですが、
おいしい食事は幸せなわたしを作るんだなぁと実感します。
レシピ自体は基本と素材を大事にした作り方ばかりで、
お休みの日にゆっくり作りたいなぁ、と思うものばかりです。